ヒ素を利用して生存=新細菌、米国の塩湖で発見―地球外生命探索に影響も
時事通信 12月3日(金)4時17分配信
生物が生きて増殖するのに使う主要な6元素の一つ、リンの代わりにヒ素を利用する細菌が、米カリフォルニア州の塩湖「モノ湖」で初めて見つかった。米航空宇宙局(NASA)などの研究チームが論文を2日付の米科学誌サイエンス電子版に発表した。生物の概念を変える発見であり、地球外生命を探索する際にも視野を広げる必要があるという。
モノ湖はサンフランシスコの東方、シエラネバダ山脈の麓にある。湖水は塩分濃度が高く、アルカリ性で、人間など通常の生物にとって有毒なヒ素が多く含まれている。
湖底で発見された新細菌は、大腸菌と同じ「ガンマプロテオバクテリア」のハロモナス類に属し、「GFAJ―1」株と名付けられた。リンは遺伝情報を担うDNA(デオキシリボ核酸)やたんぱく質、脂質の主要な成分だが、リンが全くない環境で培養すると、代わりにヒ素を取り込んで利用し、増殖することを実験で確認した。
ヒ素は、元素の周期表で窒素やリンと同じ15族に属し、化学的性質が似ている。昔から農薬やネズミ退治の薬、毒薬に使われてきたのは、細胞内に容易に取り込まれ、さまざまな酵素の働きを阻害するためだ。しかし、研究チームはヒ素が毒にならず、リンの代わりになる細菌が存在すると予想し、探し当てたという。
地球上の生物が使うリン以外の主要元素は水素、炭素、窒素、酸素、硫黄の五つ。周期表の初めの方に位置し、宇宙や地球での存在量が多いため、生物が利用するようになったと考えられてきた。
NASAはこの発見の意義について、日本時間3日午前4時からワシントンの本部で記者会見を開く予定。
NASA発表の新型細菌に批判的な見方も「地球外生命体を語れない」-米誌
サーチナ 12月3日(金)11時22分配信
米航空宇宙局(NASA)は2日(日本時間未明)、ワシントン市内で記者会見し、生物に不可欠と考えられていたリンの代わりに、有毒なヒ素を摂取して生命を維持できるバクテリアを発見したと公表した。
この新型のバクテリアは、米カリフォルニア州にある塩湖のモノ湖で発見された。NASAは「太陽系内での生命体における今後の探索で、より広範囲で多様に、未知の生命体について考慮すべき」だと発表している。
今回の発見は、NASAが事前に会見の予告を行っていたことから米国のメディアでも話題となっていた。米ニューヨークタイムズは「ヒ素を摂取し生存するバクテリアは、生命の常識を覆すかもしれない」というタイトルで報じ、誰も予測しなかった生命体が、宇宙のどこかに存在する可能性の展望が開けたと報じている。
一方、米科学誌「ナショナルジオグラフィック」のブログサイトでは、ミネソタ大学の生物学者、マイヤー(PZ Myers)氏が、この発見に対する批判的な見解をつづっている。同氏は「発見された新型のバクテリアは、厳しい環境に適応したバクテリアから派生したものであり、地球外生命体について語れるかは疑問」と指摘している。
また「生物は驚くほど幅広い範囲で生息できることが判明したというが、我々はすでにそのことを知っていた。これは予測されていたような世界を揺るがす大ニュースではなく、ささやかな生命の物語と言えるだろう」との見方を示している。(編集担当:田島波留・山口幸治)